この記事の目次
この記事は、支援する側ではなく、これからクラウドファンディングを起案する側(プロジェクトオーナー・事業者・店舗・自治体・個人)に向けて書いています。支払い方法やリターンの受け取り方といった支援者向けの手続きは扱いません。
All-or-NothingとAll-inの本質的な違いは、目標未達成のときに集まった支援金を受け取れるか、それとも全額支援者に返金されるかの一点です。この違いが、起案者が負う実施義務やリターン履行義務の有無に直結します。以下では、その違いを踏まえて自分の案件がどちらに向いているかを判断できるよう、4つの軸に沿って整理していきます。
All-or-NothingとAll-inの構造的な違い
両方式とも目標金額を設定する点は共通しています。両者を分けているのは、目標未達成時に集まった支援金をどう扱うかという条件だけです。
All-or-Nothingは、目標金額に到達した場合のみプロジェクトが成立し、支援金を受け取れる方式です。未達成なら支援金は全額支援者に返金され、起案者は資金を受け取りません。一方All-inは、目標金額の達成有無にかかわらず、集まった支援金をそのまま受け取れる方式です。CAMPFIREでは、All-inについて「1円以上の支援があれば成立する」と公式に案内しています(出典:CAMPFIREヘルプセンター、2026年8月確認)。
両者の違いを比較すると、次のようになります。
| 比較軸 | All-or-Nothing | All-in |
|---|---|---|
| 未達成時の資金の扱い | 全額返金され、起案者は受け取らない | 集まった額をそのまま受け取る |
| プロジェクト実施義務 | 未達成なら発生しない | 集まった額にかかわらず発生する |
| リターン履行義務 | 未達成なら発生しない | 集まった額にかかわらず発生する |
| 募集開始条件 | 目標金額を明示して募集開始 | 目標金額を明示して募集開始(達成の可否は成立条件に影響しない) |
起案者が負うリスクはどう変わるのか?
All-or-NothingとAll-inでは、集まった資金の額にかかわらずプロジェクトを実施し、リターンを提供する義務を負うかどうかが分かれます。
All-or-Nothingを選んだ場合、目標に届かなければ資金を受け取らない代わりに、実施義務やリターン履行義務も発生しません。プロジェクトを始める前に「やらない」という選択肢が残っている点が特徴です。対してAll-inを選んだ場合は、集まった額が目標を大きく下回っていても、実施とリターン提供を続ける必要があります。
各プラットフォームの解説では、すでに実施が決まっている案件(先行予約や在庫を確保済みの商品など)はAll-in向き、目標額に届かないと実施自体が成立しない案件(最低製造ロットの確保が前提の案件など)はAll-or-Nothing向きとされることが多いようです。ただしこれは一般的な傾向として紹介されているものであり、案件ごとの事情によって当てはまらない場合もあります。
結局どちらを選ぶべきか?(判断軸)
自分の案件がどちらに向いているかは、次の4つの軸に沿って考えると整理しやすくなります。
| 判断軸 | 確認する内容 | 該当する場合に向く方式 |
|---|---|---|
| 1. 未達成でも実施を続けられるか | 目標額に届かなくても、手元の予算や体制で実施・提供を継続できるか | できる → All-in寄り |
| 2. 目標額が実施の前提条件になっているか | 最低製造ロットや仕入れ量の確保など、目標額に届かないと実施自体が成立しないか | 成立しない → All-or-Nothing寄り |
| 3. 支援者心理への影響をどう見るか | 「達成できなければ返金される」という仕組みが後押しになりやすいと語られることが多い(統計的な裏付けは確認できていないため、あくまで各社解説で共通して語られる定性的な傾向として扱う) | 後押しを重視するならAll-or-Nothing寄り |
| 4. 未達成時の資金繰り余力があるか | 目標額に届かなかった場合でも、手元資金だけで実施を続けられるか | 余力が乏しいならAll-or-Nothing寄り |
この4軸を照らし合わせても判断がつかない場合、目標金額の設定自体を見直すことで方式選択の迷いが解消することもあります。目標金額をどう決めるかについては、目標金額の決め方を扱った記事で軸をそろえて解説しています。
方式による手数料の違い
主要プラットフォームの多くは、手数料率そのものは方式によって変わらない一方、未達成時の手数料の発生有無は方式によって異なります。
CAMPFIREの場合、実行者手数料は17%(利用手数料12%+決済手数料5%、いずれも税抜)で、これはAll-or-NothingとAll-inのどちらを選んでも変わりません(出典:CAMPFIREヘルプセンター、2026年8月確認)。Makuake(マクアケ)の場合は実行者手数料20%(税抜・決済手数料込み)で、All-or-Nothingが不成立となった場合は集まった額自体がキャンセル扱いとなるため、手数料も0円になります(出典:Makuake公式サイト、2026年8月確認)。
| プラットフォーム | 実行者手数料 | 方式による手数料の違い | 出典・確認時点 |
|---|---|---|---|
| CAMPFIRE | 17%(利用手数料12%+決済手数料5%、税抜) | 方式による差なし | CAMPFIREヘルプセンター、2026年8月確認 |
| Makuake | 20%(税抜・決済手数料込み) | All-or-Nothing不成立時は手数料0円 | Makuake公式サイト、2026年8月確認 |
上記以外のプラットフォームでは、方式によって手数料条件が異なる場合もあるため、申し込み前に必ず公式ページで確認してください。手数料の内訳をさらに細かく比べたい場合は、CAMPFIREの手数料を解説した記事、Makuakeの手数料を解説した記事、複数社の手数料を横並びで比較した記事で詳しく扱っています。
プラットフォームごとの対応状況
主要なクラファンサイトの多くは両方式に対応していますが、対応の可否や適用条件はプラットフォームごとに異なる場合があるため、利用予定のサイトで個別に確認する必要があります。
承認の要否や募集期間の設定など、方式選択に関わる細かな条件は、本記事の執筆時点で一次情報を直接確認できていない部分があるため、特定のプラットフォーム名を挙げた断定的な比較はここでは行いません。プラットフォームそのものの選び方はクラファンサイトの比較記事、掲載までの審査条件は審査条件を解説した記事で扱っているので、自分の案件に合うサイトを絞り込む際の参考にしてください。
All-or-Nothingで達成したら、それで終わりなのか?
目標金額に到達した後も、一部のプラットフォームには追加で資金を集められる制度が用意されている場合があります。
これはネクストゴールと呼ばれる制度で、達成後にさらに高い金額を目指して募集を続けられる仕組みです。適用条件や設定方法はプラットフォームによって異なるため、ネクストゴール制度を解説した記事で個別の条件を確認してください。本記事では、All-or-Nothingで達成した後にも選択肢が残っているという接続点の紹介にとどめます。
All-inを選んだ場合、法律上の注意点はあるのか?
All-inを選んだ場合、集まった額が目標を下回っていても、リターンの提供やプロジェクトの実施義務を果たす必要があるという点が法律上の論点になります。
リターンの提供は、特定商取引法上の考え方が関わる場合があります。また、集まった資金だけでは当初想定していた実施内容を満たせない場合の扱いは、案件ごとの契約内容や個別事情によって変わるため、一律の答えを示すことはできません。判断に迷う場合は、弁護士など専門家への相談を検討してください。未達成やトラブルが起きた際の実務的な対応は、クラファン失敗時の対応を扱った記事や代行会社とのトラブル対応を扱った記事で整理しています。
一次情報と確認範囲
2026年9月9日に、本文の料金・制度・運用条件を次の一次資料と照合しました。手順の提案や仮の試算は公式実績ではありません。個別案件の適否・税務判断や、専門家監修・第三者による全文検証を示すものではありません。
まとめ
判断に迷ったときは、本記事の4つの軸(未達成でも実施を続けられるか、目標額が実施の前提条件になっているか、支援者心理への影響、未達成時の資金繰り余力)に自分の案件を照らし合わせてみてください。それでも決めきれない場合は、目標金額の設定や手数料の内訳から見直すと、選ぶべき方式が見えてきます。
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